インフラマソーム

インフラマソームは細胞質に存在するタンパク質の複合体で、炎症に際して活性化され、主にはIL-1βやIL-18の分泌を引き起こさせる作用を示す。インフラマソームはPAMPs(pathogen associated molecular patterns)やDAMPs(damage-associated molecular patterns)を含む炎症誘導性刺激を認識するタンパク質と、アダプタータンパク質ASC、およびカスパーゼ-1からなる。インフラマソームの活性化はカスパーゼ-1を活性化させ、カスパーゼ-1はpro-IL-1βやpro-IL-18を切断し、その分泌を引き起こさせそれらによる炎症誘導を可能にする。

IL-1βとIL-18の発現はマクロファージや樹状細胞のような貪食能を有する細胞で強い。IL-1受容体は広範な組織で発現しており、IL-18受容体は一部の免疫細胞にのみ発現している。

インフラマソーム構成因子の中でシグナル認識に関わるものにはNLRP1〜4、6、およびAIM2、IF116がある。これらのうちNLRP3はROSやUV照射、細胞外ATP、コレステロール結晶、βアミロイド繊維、β-グルカン、マンナン、細菌毒素など多様な刺激により活性化される。NLRP3以外のものは、非常に限られた種類の刺激によってしか活性化されない。

多くの組織では、通常時のNLRP3発現レベルは低い。NFkBなどによるNLRP3、pro-IL-1β、pro-IL18の発現の促進に加え、ROS、カテプシンBの細胞質内流入、細胞内K+濃度の低下などによる刺激が上乗せされてNLRP3インフラマソームが十分に活性化されるものと考えられる。ROSはチオレドキシンからTXNIPを解離され、TXNIPとNLRP3の結合を促す事でインフラマソームの活性化を促す。カテプシンBの細胞質流入はリソソームの損傷などにより引き起こされるものと考えられる。

インフラマソームとメタボリズム制御との関連も報告されている。肥満状態では、脂肪組織や肝臓でカスパーゼ1の活性が高まっている。IL-1βはIRS-1のリン酸化を通じてIISを抑制させ、さらにTNFαの産生を促進させる事でもインスリン抵抗性に寄与する。膵臓でのIL-1βの作用はβ細胞の減少と関連づけられている。β細胞から産生されるホルモンの一種であるアミリン(IAPP : islet amyloid polypeptide)はアミロイド繊維を形成しやすく、そのアミロイド繊維もNLRP3インフラマソームの活性化を引き起こさせると考えられる。



その他の参考文献
Strowig et al., 2012 #536


  • 最終更新:2013-02-13 14:12:40

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード