エクソソーム

エクソソームはExtra Membrane Vesicles(EMV)の主なものの一つで、他に代表的なものにはアポトーシスを起こした細胞から生じるApoptotic bodyや血小板、赤血球、内皮細胞から生じる事が報告されているmicrovesicleがある。Apoptotic bodyはとりわけ大きく、Microvesicleは平均的にはエクソソームよりも大きい。Apoptotic bodyとmicrovesicleが細胞膜から生じるのに対し、エクソソームはLate Endosome(LE)から生じる。Late Endosomeは内腔に多数の小胞(Intralumenal vesicles : ILVs)を含むため、Multi Vesicular Bodies(MVBs)とも呼ばれ、このMVBが細胞膜と融合すると中のILVがエクソソームとして細胞外に放出される。EndosomeはTGNと双方向に小胞を行き来させ、LEは内容物をリソソームに運び分解を促したり、リソソームの維持に必要な物質を送るなどの役割も持つ。LEやILVの形成は成長因子により正に制御される。

エンドサイトーシスされた内容物の大部分はEarly Endosome(EE)から再び細胞膜および細胞外へと戻される。EEはクラスリン、カベオラ、Arf6依存性のものや、GPI anchored protein enriched early endosomal compartments(GEEC)からなる。EEは細胞膜側ではいくつもの管状の構造が伸びた構造を取っており、核側では丸みを帯び、少量のIVLを含む。EEでのILVの形成にはクラスリンやESCRT(endosomal sorting complex required for transport)複合体が関わっている。ESCRT複合体は細胞質側でユビキチン化された膜タンパクのILVへの取り込みに役割を果たす。EE内のpHは6〜6.8程である。

LEは核側のEEから生じ、丸みを帯びた構造で、直径は250-1000nmであり、表面は負電荷に富む。pHは4.8〜6程である。ILVの直径はおよそ50-100nmである。LEの膜にはコレステロールやスフィンゴ脂質が多く、LAMP1のようなリソソーム膜タンパクやV-ATPaseを含み、クラスリンやESCRT複合体が結合している。

EE膜上でその動向を制御するRab5のエフェクターにはVPS34/p150があり、これはPtdInsをリン酸化しPtdIns(3)Pを生じさせる。Rab5-GTPはRabaptin5を通じてRab5のGEFであるRabex5をリクルートし、自身の活性とPtdIns(3)Pの生成にポジティブフィードバックを形成させる。LEの形成に際しては、Rab5の他Rab4、11、22が解離し、Rab7の他Rab9が新たに結合する。また、膜間の係留に関わるCORVET複合体がHOPS複合体に置き換わる。このような変化によりLEはEEや細胞膜とは結合しなくなる。SMAD1/Mon1-Ccz1はRab5-GTPやPtdIns(3)Pと結合し、Rab7やHOPS複合体を引き寄せる一方、Rabex5をエンドソーム膜から解離させる。Rab7のエフェクターには、LEをダイニンモーターに接続させたりILVの形成を促すRLIPやレトロマー複合体、HOPS複合体、Rubiconなどがある。VPS34/p150はBeclin1と複合体を形成し、またエンドソーム膜上ではHOPSアクティベーターであるUVRAGとも結合する。RubiconによるUVRAGの抑制はRab7の活性化により解除される。LEではPIKfyveの作用によりPtdIns(3,5)P2の形成が促進される。PIKfyveはPtdIns(3)Pによりリクルートされる、ArPIKfyveやPtdIns(3,5)P2ホスファターゼであるSac3により活性化される。これらを含む複合体は従って脂質のリン酸化と脱リン酸化の両方を促進させる。

LEのILVの形成にはESCRT複合体やVPS4、Alixによる膜表面からの制御が関与している。ILVの形成に際しては、まずVPS27/HrsによりESCRT-I構成因子のTsg101がリクルートされ、これがユビキチン化されたタンパク質と結合する。その後ユビキチン化されたタンパク質はESCRT-IIと、次いでESCRT-IIIと結合する。さらにESCRT-IIIは脱ユビキチン化酵素Doa4をリクルートし、さらにVPS4がESCRT-IIIにリクルートされ、この複合体が取り除かれる。AlixはILVの形成に関わるBMP/LBPA(脂質)と結合する他、ESCRT-IIIのリクルートにも関わっている。AlixやTsg101はエクソソームにも存在が認められる。

ESCRT非依存的なILVの形成も存在し、BMP/LBPAやセラミドといった脂質がその制御に関わっている。Rab7エフェクターのRILPもILVの形成に重要である事が示されているが、その作用機序は良く分かっていない。成長したILVの膜にはBMP/LBPAとセラミドが多く、形成初期に含まれるコレステロールはNPC1/2の作用により除かれて行く。LEの膜はリソソームによる分解に抵抗性があり、逆にILVの膜はリソソームによる分解を受けやすい。なおILVの内膜と外膜の脂質の組成は類似している。

エクソソームはMVB、あるいはゴルジ体のトランス側から放出される1~2個のILVを含む小胞と細胞膜との結合により細胞膜外に放出される。後者の経路からの分泌は比較的恒常的である。MVBと細胞膜との融合の制御にはRab27a/bが関わっている事が報告されている。Rab27aとRab27bは少なくとも一部重複しない機能を持ち、それらのKDは異なる表現型を示す。Rab27のエフェクターであるSlp4(SYTL4)やSlac2b(EXPH5)のKDはそれぞれRab27aとRab27bのKDと類似した影響を与える(Ostrowski et al., 2010)。

エクソソームは体液や尿中に存在し、造血細胞や種々の上皮系細胞、アストロサイト、ニューロンなどから分泌される事が報告されており、分泌されたエクソソームは主には食作用により細胞に取り込まれると考えられる。この食作用の制御にはdynamin2やPI3Kが関わっている。pH5付近ではエクソソームは細胞膜と融合できる。食作用により取り込まれたエクソソームも、(ILVとMVBとの融合などにより)内容物を細胞質内に放出しうる。

様々な癌細胞でエクソソームの分泌が増加しており、また、UVやROS、細胞内カルシウム濃度の増加などによってもエクソソームの分泌が増加する。p53はTSAP6、Chmp4、カベオリンの発現増加などを通じてエクソソームの分泌を促進させる。Chmp4はAlixをエンドソームにリクルートする事でILVの形成を促す。

エクソソームには細胞質や細胞膜由来のタンパク、tubulin、actin、annexin、MHC class I、tetraspanins(特にCD9、63、81、82)、Hsp70、Hsp90などが比較的多く含まれる。Tetraspaninはコレステロールやスフィンゴ脂質と高い親和性を有し、また同種あるいは他の様々なタンパク質と結合し、タンパク質のILVへの取り込みにも関わっている。エクソソームには様々なコンパートメントからのタンパク質が含まれるが、小胞体とミトコンドリアのタンパク質が含まれる事は少ない。他にもmRNAやmiRISC、生理活性を有する脂質であるプロスタグランジンなども含む。エクソソームの形成はリソソームに運ばれるILVの形成に比べ、比較的セラミドに対する依存性が強い。

癌から産生されるエクソソームは、FasLやTRAILによる免疫細胞のアポトーシスや機能低下を促したり、CD39やCD73による細胞外でのアデノシンの産生を通じて免疫応答を抑制したり、Treg細胞の増殖や機能を促進したり、樹状細胞の分化を抑制したりするなどして、癌細胞の免疫細胞による除去を阻害する事ができる。繊維芽細胞から分泌されるCD81陽性エクソソームは乳癌細胞の浸潤性を増加させる。これは、癌細胞内のWnt11と取り込まれたエクソソームがWnt-PCPシグナリング(PCP : planer cell polarity : 平面内細胞極性)を活性化させる為である事が示唆されている(Luga et al., 2012 #546)。培養条件下で、活性化されたヒトCD4+T細胞から分泌されるエクソソームは単球のコレステロールの蓄積とTNFαの発現を増加させる事が報告されている(Zakharava et al., 2007)。



その他の参考文献
Record et al., 2011 #567
Huotari & Helenius, 2011 #568
György et al., 2011 #569


  • 最終更新:2013-02-13 14:15:08

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