2.3 免疫系

<免疫系の加齢変化>

加齢に伴い、新たなT細胞、B細胞の産生は減少する。T細胞の発生、分化の場である胸腺は加齢と共に著しく萎縮し、B細胞の骨髄内での分化過程も老化により影響を受ける。加齢に伴うHSC(造血幹細胞)の数の変化はマウス内でも系統によって異なり、C57BL/6では増加するが、DBAでは減少する。HSCのターンオーバーも系統によって異なっている。

老齢マウスのHSCでは、metabolic stressに対してのオートファジーの誘導能は保たれているが、基底状態のオートファジーのレベルが増加している。Metabolic stressを加えない状態でオートファジーを阻害すると、老齢マウスのHSCでのみコロニー形成率の低下ガ起こる。老齢マウスのHSCでは糖の取り込み能も低下している。これらのHSCにおけるオートファジーの制御にはFoxO3aが関わっている(Warr et al., 2013 #586)。

HSCの分化はリンパ系から骨髄系に傾く。HSCの中にもサブクローンが存在し、骨髄系に分化しやすいサブクローンの割合が増加していく事も報告されている。HSCの老化にはそれ自身の変化と骨髄ストローマ細胞を含む環境の変化の両方が関わっている。ヒトのHSCについては数は増えるという報告がなされている。多能性をもつCD34+38-細胞が占める割合は老齢者の骨髄中で増加している。骨髄細胞系列の前駆細胞(CD34+CD38+CD90-CD45RA+/-CD10-及びCD34+CD33+細胞)には変化は無く、B細胞の前駆細胞(CD34+CD38+CD90-CD45RA+CD10+及びCD34+CD19+細胞)は減少している(Kuranda et al., 2011 #512)。アカゲザルではHSC数は減少し、骨髄細胞系列の細胞の産生は減少するが、リンパ球の産生は変化が無い。

造血の場である骨髄中に占める脂肪髄の割合が、特に四肢で加齢に伴い増加する。ヒトの腸骨稜で見た場合、骨髄の細胞成分は出生後から30歳までで約50%にまで減少し、さらに約30%にまで減少して行く事が報告されている。

T細胞は骨髄でHSCから発生し、胸腺を通って成熟し、末梢のナイーブT細胞となる。胸腺内で何段階かの変化を経てCD4+CD8+細胞となり、そのうち自己MHCを認識できる一部の細胞が、CD4あるいはCD8のいずれかを抑制してsingle positive T細胞となって髄質へと移行する。若いマウスの骨髄細胞は老化マウスの胸腺で十分分化できないし、老化マウスの骨髄細胞も若いマウスの胸腺で十分に分化できない。加齢に伴いメモリーT細胞は増加し、ナイーブT細胞は減少する。老齢マウスのT細胞は抗原提示細胞との免疫シナプス形成能が低下しており、抗原提示によって約半分程度のIL-2しか産生できない。また活性化マーカーの発現も低下しており、反応性が低下している。CD4+T細胞はCD8+メモリー細胞の産生にCD154を介して関わるが、老化CD4+T細胞ではCD154の発現が低下しており、より少数のCD8+メモリーT細胞しか産生できない。老化したマウスでは骨髄で作られるB細胞の数が減少するが、成熟B細胞の数は一定で、これはターンオーバーが低下するためである。自然免疫系の機能は比較的良く保たれる。マクロファージの反応性は低下しているようである。この事と、老化個体の炎症性サイトカイン上昇との関係は明らかでない。

ヒトにおいても、老齢者のT細胞では刺激を受けた後のIL-2の産生は低下している。また、培養条件下で増殖を刺激した際のIL-1β、IL-6、TNFαの産生が増加する。ただし刺激を与えない条件ではIL-1β、IL-6、TNFαの産生レベルに変化は無く、血清中の濃度レベルにも変化は無い(Fagiolo et al., 1993 #516)。主要な補助刺激受容体であるCD28の発現が損なわれたT細胞が増加する。これは特にCD8+T細胞で比較的顕著であるが、マウスでは認められない。CD28の発現抑制は、homeostatic proliferationを促すIL-7やIL-15や、TNFα、反復的な抗原刺激、刺激時のIFNα/βの存在などにより促される(Weng et al., 2009 #515)。

ヒトでは加齢に伴いナイーブCD8+T細胞やメモリーCD8+T細胞は減少するが、最終分化を終えたCD8+T細胞は増加し、特定の抗体を発現するCD8+細胞の割合が増えるようになる。CD4+T細胞の細胞集団にはこのような変化は顕著では無いが、刺激に対する応答性は低下しており、それにはCD28発現細胞の減少に加え、刺激を増幅する為のMAPKシグナリングが抑制されているも関連している。老齢者のCD4+T細胞ではERKを抑制するdual specific phosphatase(DUSP)6の発現が増加している。これはDUSP6の発現を抑制するmiR-181aの発現が低下する為である(Li et al., 2012 #513)。



その他の参考文献
新老年学 第三版、大内尉義、秋山弘子、折茂肇/編集、2010、東京大学出版会


  • 最終更新:2013-02-13 10:16:42

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