2.9 皮膚

<皮膚の加齢変化>

表皮は全体的に薄くなり、扁平化する。真皮との境界も扁平に近づく。一方で厚さの不均一さは増す。ケラチノサイトの大きさも不揃いになり、核に異型が見られるものも出現するようになる。ケラチノサイトの分裂速度が低下し、表皮の創傷治癒に遅延が見られるようになる。上皮幹細胞は数は変化しないが、増殖能は低下している事が示唆されている(Giangreco et al., 2008 #25)。表皮中のメラノサイトやランゲルハンス細胞、真皮中の繊維芽細胞、肥満細胞及び血管は減少する。組織の大部分を占める細胞外基質に関しては、加齢に伴いコラーゲン量の低下が見られ、これが皮膚の弾力性の低下を招き、しわやたるみの原因の一つとなる。皮膚の繊維芽細胞を調べるとコラーゲンやプロテオグリカンの産生能力が低くなっている。また、コラゲナーゼ産生が過剰になり、コラゲナーゼインヒビターの産生が低下する。コラーゲンは小胞体内で合成され分泌されるが、分泌されずに小胞体内で分解されてしまうものの割合が加齢に伴い高まる事がラットを用いた実験から示されている。エラスチン繊維も減少する。一方UVはコラーゲンは減少させるが、異なるタイプのエラスチン繊維は増加させる(Watt & Fujiwara, 2011 #437)。老化に伴い、細胞外マトリックスの質的な変化も起こり、エラスチンのスプライシングの起こり方が変化する可能性が提示されている。フィブロネクチンについても同様である。

肝臓、心臓、腎臓などでは加齢と共に実質細胞が減少し、それを埋めるようにコラーゲンなどの細胞外マトリックスが増加していく。

表皮幹細胞の維持に重要なβ1インテグリンの発現も加齢に伴い低下する。
β1インテグリンとECMの相互作用は、その下流のERK/MAPKシグナリングを通じて表皮幹細胞の維持に重要な役割を果たす。表皮幹細胞は分化した細胞よりも多くのECM因子を発現しているが、これは分化に際してc-Mycにより負に制御される。アクチンファイバーの制御も、単量体アクチンはSRF転写因子のコアクチベーターMALの抑制を通じて分化を抑制するので、表皮幹細胞の維持に重要である(Watt & Fujiwara, 2011 #437)。



その他の参考文献
新老年学 第三版、大内尉義、秋山弘子、折茂肇/編集、2010、東京大学出版会


  • 最終更新:2013-02-13 10:24:42

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