6.5 FoxO転写因子

<FoxO転写因子とその基本的な役割>

ヒトでは50個のForkhead box(FOX)転写因子が存在する。内26遺伝子はゲノム上の9領域に存在し、他は散在している。FOX転写因子はさらにA〜Sの16個のサブファミリーに分けられる。FOX転写因子のうち11遺伝子についてはかなり広範な発現パターンが認められており、これらはいずれも進化的に比較的古いものである。FOX転写因子はリンカーヒストンと構造上の類似性が有り、多数のFOX転写因子についてヌクレオソーム中のDNAにアクセスできる事が報告されている。

<FoxO転写因子とその基本的な役割>

FOX転写因子ファミリーのサブクラスFoxOに属する転写因子は線虫から哺乳類まで保存されており、ストレス抵抗性を始め多様な機能を有している。線虫とハエのFoxO転写因子は、それぞれdaf-16、dFOXOと呼ばれるものが一種類あるのみで、daf-16はdaf-2の変異による寿命の延長に必要であり、dFOXOをfat bodyで強制発現させると寿命が延長する。

FoxOのターゲット遺伝子には、ストレス抵抗性に関わるCAT、MnSOD、Gadd45、DDB1、細胞周期の抑制に関わるINK4B、p21、p27、ARF、アポトーシスに関わるBim、FasL、糖新生に関わるG6P、その他血管新生や分化に関わるものなど多岐にわたっている。

哺乳類において、IISの活性化はAktを通じてFoxOの機能を抑制する。一方酸化ストレスや低栄養はJNKやAMPKを通じてFoxOを活性化させる。リン酸化以外にも、アセチル化、モノ/ポリユビキチン化といった修飾もFoxOの機能の制御に関わっている。

哺乳類には4種類のFoxO転写因子、FoxO1、3、4、6が存在している。いずれもAktによるリン酸化を受けて機能が抑制される。FoXO1、3、4はリン酸化されると14-3-3と結合し、核外へ移送される。リン酸化されたFOXO1、FOXO3AがMDM2によりユビキチン化され、分解に導かれる事も報告されている(Fu et al., 2009 #497)。

マウスにおいては、FoxO1は脂肪組織と卵巣で強く発現している。FoxO3は広範な組織で発現しているが、特に脳、脾臓、心臓、卵巣で強く発現している。FoxO4は骨格筋、心筋、脂肪組織で発現しており、FoxO6は脳で発現している。ただし、脳の中でも部位毎にFoxOの発現パターンは異なっている。

<FoxO転写因子の代謝制御における役割>

代謝に関しては、FoxOは肝臓における糖新生や視床下部からの食欲亢進ホルモンの分泌を促進する。β細胞においては、FoxO1はその細胞の機能に重要な役割を持つNeuroDやMafAの発現を促進する。一方FoxO1はFoxA2のPdx1プロモーターへの結合に拮抗する事でPdx1の発現を抑制する。このようにFoxOは血糖値を維持させる働きを担っている。また、絶食やグルココルチコイド、denervation、disuseによる筋萎縮には、FoxOによるプロテアソーム系及びオートファジーに関わる遺伝子の発現促進が寄与している。

<その他のFoxO転写因子の役割>

HSCでのFoxOの欠失は、ARFやp27の発現低下を通じて細胞の過剰な増殖とアポトーシスへの抵抗性を誘導し、癌の発生を促進する。ニューロンでは、ストレスによるFoxOの活性化は保護的な役割よりもむしろアポトーシスを誘導する。ニューロンでの酸化ストレスによるFoxOの活性化には少なくとも部分的にはMST1が関わっている。FoxOは免疫系の制御にも関わっており、FoxO3を欠くマウスのT細胞ではNF-kBが活性化しており、過剰な炎症反応が起こる。

Other Ref
Salih & Brunet, 2008 #211


  • 最終更新:2013-02-13 13:17:12

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