DNAメチル化酵素(DNMT1)

ヒトやマウスでは、DNMT1には4つの選択的転写開始点が存在している事が知られている。それらに対応してDNMT1には体細胞型のDNMT1s、卵特異的に発現するDNMT1o、精母細胞特異的に発現するDNMT1p、そしてミトコンドリア局在型のmtDNMT1の4種のisoformが存在している。DNMT1oはDNMT1sよりも上流に転写開始点を持ち、そのプロモーターは卵特異的に非メチル化状態にある(Ko et al., 2005 #232)。DNMT1pはDNMT1sの下流に転写開始点を持つ。DNMT1s、DNMT1o、DNMT1pはいずれも異なる1st exonを利用する。mtDNMT1はDNMT1sの転写開始点よりも若干上流から転写が開始され、DNMT1s の1st exonを含むより長い1st exonが翻訳され、ヒトの場合はミトコンドリア局在シグナルを含む101アミノ酸残基がアミノ末端に付加された産物が生じる。MEFやHCT116細胞について調べられた限り、mtDNMT1 mRNAはDNMT1s mRNAの1~2%を占めている(Schock et al., 2011 #233)。mtDNMT1はミトコンドリアに局在し、mtDNAをメチル化しそこからの転写を調節している。DNMT1sの上流150~200bpにはNRF1の結合予測配列が含まれており(mtDNMT1の1st exon中)、NRF1の強制発現はmtDNMT1の発現を促進させる(Schock et al., 2011 #233)。このNRF1結合予測配列はp53結合領域とオーバーラップしており、p53が活性化されると同領域へのp53の結合は減少し、DNMT1sおよびmtDNMT1の発現が増加する(Schock et al., 2011 #233)。

DNMT1を欠損するマウスは胎生致死であり、死に至る時点でゲノムはほぼ完全に脱メチル化されている。但し胎生致死となる胎生8.5日時点までは大きな異常は認められていない。DNAメチル化酵素活性を失わせた変異型DNMT1を発現するマウスでも類似した表現形が認められる。ヒトの体細胞では、DNMT1の発現がおよそ20%以下となるとDNAの顕著な低メチル化が起こり、細胞が生存できなくなる事が報告されている。

以下では、DNMT1の主要な産物であるDNMT1sについて述べ、特に断らない限りはDNMT1sを単にDNMT1と表す。

DNMT1はその構造上N末端側の制御領域とC末端側の触媒領域に分けられ、制御領域中にはN末端側からPBDドメイン、TSドメイン、CXXCドメイン、BAH1ドメイン、そしてBAH2ドメインが並んで存在している。PBDドメインはPCNAとの結合に関わる領域で、TSドメインはヘテロクロマチンとの結合に関わっている。TSドメインは触媒領域と相互作用して構造を変化させ、DNMT1とヘミメチル化DNAとの結合を阻害する。CXXCドメインは非メチル化DNAへの結合を仲介するが、これを欠いてもDNMT1の活性や特異性に影響は認められない。C末端側の触媒領域のみでは酵素活性は発揮されない(Qin et al., 2011 #326)。

DNMT1は多様なタンパクと相互作用する。知られているものとして、少なくともAKT1、Cdh1、Chk1、CK1δ/ε(Sugiyama et al., 2010 #322)、Daxx/RelB、、DMAP1、DNMT3A/B、EZH2、G9a、HESX1、hNaa10p、HP1(Lehnertz et al., 2003 #319; Fuks et al., 2003 #320)、LSD1/KDM1A、LSH(Myant & Stancheva, 2008 #325)、MeCP2、MBD2/3、PARP1/CTCF、PCNA、PKCs(Lavoie et al., 2011 #321)、pRb(Robertson et al., 2000 #324)、p23、p53(Esteve et al., 2005 #323)、RIP140(Kiskinis et al., 2007 #317)、RGS6 、SET7、SIRT1、SNF2h(Robertson et al., 2004 #316)、SP1、SP3(Esteve et al., 2007 #318)、STAT3、SUV39H1(Fuks et al., 2003 #320)、Tip60/UHRF1/HDAC1/HAUSP(USP7)、Tip5、UBC9、WT1、9-1-1複合体がある(Qin et al., 2011 #326)。

DNMT1の発現はmRNA量およびタンパク量の双方について調節されている。DNMT1の転写制御には少なくともc-Jun、E2F/pRb/HDAC、p53、Sp1/3、PARP1、STAT3が関わっている事が示されている。P19細胞(マウス胚性腫瘍細胞)におけるH-RasによるDNMT1の誘導には、DNMT1プロモーター-1744~-1650 bpの領域が必要であり、c-Junの同領域への結合が応答に関わっている事が示されている(Rouleau et al., 1994 #234)。同じくP19細胞についてc-JunはDNMT1イントロン1、2の中にも結合する事も示されている。c-Junのイントロン2への結合を通じた転写促進はc-JunによるpRbのリクルートメントに依存しているが、この制御の存在は細胞種依存的である(Slack et al., 2001 #235)。NIH3T3細胞やCOS-7細胞を用いたレポーターアッセイから、DNMT1プロモーターは転写開始点からおよそ -100 ~ +200 の領域で、-2000 ~ +200 bpの領域と遜色ない活性を示す事が示されている(Kimura et al., 2003 #236)。このコア領域にはE2Fの結合が予測される4つの配列A~Dが存在するが、全てに変異を入れてもプロモーター活性は~60%程度しか低下しない。コア領域はH-RasやRSV、E1A、SV40Tを発現させたNIH3T3では大幅なプロモーター活性の上昇を示すが、これは転写開始点上流にある配列Aと下流にある配列Cに大きく依存している。EMSAからは配列CのみについてE2F1の結合が示唆されており、また配列Cに変異を加えた場合にはプロモーター活性の細胞周期依存性が損なわれる(Kimura et al., 2003 #236)。pRbのco-transfectionやTSA処理による解析から、配列Cに依存した転写活性化能は細胞周期依存的にE2F1とpRb、HDACとの相互作用を通じて抑制されている事が示唆されている(Kimura et al., 2003 #236)。同じくNIH3T3細胞においてDNMT1転写開始点上流100 bpの領域中にはSp1/Sp3の結合配列が存在しており、競合的に結合するこれらはいずれもDNMT1の転写を促進させる(Kishikawa et al., 2002 #237)。このSp1/Sp3結合配列の近傍にはp53の結合配列が存在しており、HCT116細胞における同配列へのp53の結合がEMSAおよびChIPにより確認されている。このp53の結合はDNMT1の発現を抑制する(Peterson et al., 2003 #238)。A549細胞において、Sp1はp53に対して相対的に発現が低い場合にはp53と協調してDNMT1の転写を抑制し、逆に相対的に発現が高い場合にはSp1とp53との相互作用がMdm2によるp53の分解誘導を促進しDNMT1の発現が促進される事が報告されている(Lin et al., 2010 #239)。肺癌患者においてはp53の変異がDNMT1の発現増加と相関している(Lin et al., 2010 #239)。p53はDNMT1と直接相互作用してその活性を促進させもする(Esteve et al., 2005 #323)。DNMT1はポリADPリボースと相互作用しメチル化活性を抑制させる(Reale et al., 2005 #240)。この作用によりDNMT1プロモーター転写開始点付近に結合したポリADPリボシル化PARP1はその非メチル化状態の維持に寄与している事が示唆されている(Zampieri et al., 2009 #241)。

転写後、翻訳前の段階では、miR-126、148、152、およびAUF1(Torrisani et al., 2007 #242)がDNMT1の発現を抑制する。IL-6はヒト胆管癌においてmiR-148とmiR-152の発現を抑制し、DNMT1の発現を促進する事が示唆されている(Braconi et al., 2010 #243)。DNMT3A/Bの発現を抑制するmiR-29bについてはSp1もターゲットに含まれ、従ってこれも間接的にDNMT1の発現を抑制する。

DNMT1はTip60、UHRF1、HDAC1、HAUSPと複合体を形成する。Tip60によるDNMT1 Lys173, 1113, 1115, 1117のアセチル化はUHRF1によるユビキチン化を促進しDNMT1の分解を誘導する。逆にHDAC1はDNMT1を脱アセチル化し、HAUSPはDNMT1を脱ユビキチン化する事でこれを分解から保護する(Du et al., 2012 #244)。ヒトの大腸癌において、DNMT1とHAUSPの発現が逆相関している事も報告されている(Du et al., 2012 #244)。DNMT1の分解にはAPC/C-Cdh1が関わっている。Cdh1の強制発現はDNMT1の発現レベルを減少させるが、別のAPC/C活性化サブユニットであるCdc20を強制発現させてもDNMT1の発現レベルは減少しない(Ghoshal et al., 2005 #245)。DNMT1とCdh1の相互作用も認められている(Ghoshal et al., 2005 #245)。APCを欠くヒト結腸直腸癌由来のHT-29細胞に正常なAPCを発現させると内在性のDNMT1の発現は低下し、DNMT1プロモーターを用いたレポーターアッセイからもその活性の低下が認められる(Campbell & Szyf , 2003 #246)。DNMT1の転写レベルの低下はAPC/β-catenin/TCFカスケードを通じたものと考えられ、ドミナントネガティブなTCF/LEFを発現させる事でもDNMT1の発現の低下が起こる(Campbell & Szyf, 2003 #246)。ただしDNMT1プロモーターにTCF/LEFの結合領域は同定されておらず、AP-1などのTCF/LEFターゲットを通じた間接的な影響である可能性が考えられる。APCの発現やDNMT1の抑制はHT-29細胞の足場非依存的な増殖を抑制する(Campbell & Szyf, 2003 #246)。逆にヒト肝癌由来のSMMC7721細胞株でDNMT1をKDするとAPCプロモーターが脱メチル化され、その発現が増加する(Fan et al., 2007 #247)。DNMT1タンパクの分解制御はDNMT1とDNMT1oでは異なっており、DNMT1oでDNMT1を置換した場合マウスの脳、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、および精巣でDNMT1oがより安定的に存在し発現レベルが高くなる事が報告されている(Ding & Chaillet, 2002 #248)。逆にヒト乳癌由来のMCF7細胞ではDNMT1のアミノ末端配列依存的はプロテアソームによるDNMT1の分解を抑制している(Agoston et al., 2005 #249)。

SET7によるDNMT1 Lys142のメチル化はDNMT1のプロテアソーム依存的な分解を誘導する。LSD1/KDM1Aはこのメチル化を除去する事でDNMT1を安定化させる。AktによるDNMT1 Ser143のリン酸化もSET7によるメチル化修飾を抑制してDNMT1を安定化させる(Esteve et al., 2010 #250)。他にAktによるDNMT Ser127, 143のリン酸化とPKCによるSer127のリン酸化はDNMT1とPCNAおよびUHRF1との相互作用を抑制する。DNMT1は多くの部位でアセチル化修飾を受けるが、先述のようにユビキチン化を促進する以外にも、DNMT1 Lys1349, 1415のアセチル化はDNMT1のメチル化活性を抑制し、GKリンカー中のアセチル化(Lys1111, 1113, 1115, 1117)はメチル化非依存性の転写抑制能を促進させる。これらのアセチル化はSIRT1による脱アセチル化を受ける(Peng et al., 2011 #251)。SUMO化によるDNMT1のDNA結合能の促進およびメチル化活性の亢進も報告されている(Lee & Muller, 2009 #252)。HSP90はDNMT1のユビキチン化を抑制しているが、HSP90がアセチル化されるとDNMT1との相互作用が阻害されDNMT1の分解が誘導される(Agoston et al., 2008 #253)。

DNMT1(およびDNMT3A)の発現は細胞周期依存的で、S期に最も高くなる。G0期におけるDNMT1およびDNMT3A/BはG1期よりもさらに低くなる(Robertson et al., 2000 #254)。この事は腫瘍化しているT24細胞についても腫瘍化していないLD98細胞のどちらについても言える。Balb/c 3T3細胞についても同様であるが、同時にこの細胞を用いた研究からはrun-on-assayからDNMT1 mRNAの転写自体は細胞周期を通じて変化しない事が示されている(Szyf et al, 1991 #255)。T24細胞においてDNMT1 mRNAを不安定化させるAUF1が細胞周期を通じてDNMT1と逆相関する発現パターンを示す事が報告されており、細胞周期依存的なDNMT1の発現パターンにはAUF1の寄与が大きい可能性が考えられる(Torrisani et al., 2007 #242)。DNMT1 Lys142のメチル化に対する相対的なDNMT1 Ser143のリン酸化レベルもS期に最大となる(Esteve et al., 2010 #250)。

DNMT1はDDR制御にも関わっている。核内の一部にレーザーを照射すると、細胞周期非依存的に該当箇所にDNMT1およびPCNAが速やかにリクルートされる。DNMT3A/Bについてはこのようなリクルートメントは認められない。DNMT1の集積はPCNAとの相互作用に必要なドメインに依存している(Mortusewicz et al., 2005 #256)。HCT116細胞において、DNMT1のDSBへの集積はPCNAだけでなく9-1-1やChk1との相互作用に依存している。ATRの阻害はDNMT1のリクルートメントを抑制するがATMの阻害については大きな影響は認められない。Chk1はDNMT1のリン酸化を通じて9-1-1やPCNAとの相互作用を促進させている可能性が考えられる。DNMT1はDSBに素早く集積するが、その局在はDSBに局在を示す他のタンパク質ほど長くは保たれない。またこの細胞では、γH2AXの増加、ATMの活性化、H3T11のリン酸化修飾の減少が認められる(CHK1は通常時にはキナーゼ活性を保ったまま大部分がクロマチンに結合しており、H3T11はそのターゲットの一つで、そのリン酸化修飾はGCN5をリクルートする)。DNMT1 KO HCT116細胞ではDSBの回復により長い時間を要する(Palii et al., 2008 #258)。DSBに伴うATMやATRの活性化はDNMT1 KO HCT116細胞ではより早くbaseline levelに戻る。通常の培養条件下においても、DNMT1 KO HCT116細胞ではDNAの傷害が増加している(Ha et al., 2010 #257)。T24細胞において、DNMT1のKDはATRによるChk1、2、H2AXのリン酸化とCdc25aの分解を誘導する。メチル化活性を持たないDNMT1を発現させる事でこのような変化を抑制できる。従ってDNMT1 KDによるこれらの影響はメチル化活性非依存的である(Unterberger et al., 2006 #259)。HCT116細胞において5-azaはDSBを起こさせG2期で細胞周期を停止させるが、この時DNMT1が存在しないとp53、Chk1、H2AXの活性化が阻害される(Palii et al., #258)。hTERTを発現させ不死化させたヒト繊維芽細胞でDNMT1の発現を抑制すると、MMR関連因子の発現が低下し、それはおそらくDDRが起こる事に起因している。この細胞でDNMT1を中程度に抑制した場合にはG1期の細胞が増加し、強く抑制した場合にはG2/M期で停止した細胞が著しく増加する(Loughery et al., 2011 #566)。

MEFにおいてDMAP1をKDするとDSBが増加する。DMAP1はS期にはDNMT1やPCNAと共局在する事が報告されている。DMAP1をKDしたMEFではPCNAのDSBへの局在も損なわれており、PCNAとの結合能を欠くDMAP1を発現させてもPCNAのDSBへの局在は回復しない(Negishi et al., 2009 #260)。DMPA1はDSBにも関わるNuA4複合体やSwr複合体の構成因子でもあり、DSBの制御に直接関与しているものと考えられる。

DNMT1を欠くES細胞ではHRが増加する事に加えて、点変異や欠失、挿入による変異が10倍程度増加している(Chen et al., 1998 #261)。HCT116細胞を過酸化水素で処理した場合には、DNMT1、SIRT1、EZH2を含む複合体の形成が促進される。同じくヒト大腸癌由来のSW480細胞を過酸化水素で処理した時、DNMT1、SIRT1、EZH2、γH2AXがGC-poorで発現の低い遺伝子周辺領域からGC-richで発現の高い遺伝子周辺領域に再配置され、再配置先の遺伝子の転写が抑制される事が報告されている(Hagan et al., 2011 #262)。なおマウスES細胞でも過酸化水素処理によってSIRT1のゲノム上の局在が大きく変化し、元々SIRT1が結合していた遺伝子の発現の抑制が解除される。ここでSIRT1の移行先にはDSB領域が含まれると考えれ、かつそれがATMやH2AXに依存している事が示唆されている。SIRT1の抑制はHRRを抑制する。マウスの脳で老化に伴い発現が増加する遺伝子の中にはES細胞におけるSIRT1標的遺伝子がEnrichしている(61/325遺伝子、1.37倍のEnrichment)。神経細胞でSIRT1を強制発現させるとそれらの発現変化が大きく抑制される(Oberdoerffer et al., 2008 #384)。

HCT116細胞における場合と異なり、A549細胞(human non-small cell lung carcinoma cell)ではDNMT1 KDはS期で細胞周期を停止させるが、5-azaは細胞周期を停止させない(#263)。この細胞においてDNMT1のKDはJun-B、Fos、p21、p27、H-Ras、GRO1、2、GADD45β、NF-kBなどの発現を上昇させる(Milutinovic et al., 2003 #263)。DNMT1を欠くHCT116細胞では増殖速度は低下するが細胞周期は停止しない。一方IMR90においてDNMT1をKDするとG1期で細胞周期は停止する(Barra et al., 2012 #264)。この時p53が活性化しp21の発現が増加しているが、DNAダメージの大きな増加は認められない。このIMR90のG1アレストはARFの発現増加によっていると考えられ、DNMT1のKDに加えp53あるいはARFを不活性化させると細胞周期は停止しない。ただしゲノムの多倍体化が起こる(Barra et al., 2012 #264)。ヒト胎児肺由来BS2細胞の場合は5-aza処理とDNMT1のKDのいずれによってもG1アレストが起こる事が報告されている(Zheng et al., 2006 #265)。HCT116細胞をドキソルビシンで処理するとp53およびDNMT1依存的にCdc25cとCDK1が抑制される。この時Cdc25cとCDK1プロモーター中のp53結合領域周辺のCpGサイトのメチル化が亢進する(Gac et al., 2006 #266)。

IMR90細胞やマウスC3H mouse embryo細胞では継代に伴いDNAが低メチル化していく事が報告されている(Wilson & Jones, 1983 #124)。Human embyronic lung fibroblast(HEF, 20PDL)を継代していくと、22~35~48 PDL(この時点で大部分がSA-β-gal陽性となる)にかけてゲノムDNAのメチル化レベルは低下していく。DNMT1の発現は22~35PDLにかけてはあまり変化しないが、35~48 PDLにかけてはmRNA、タンパクレベル共に大きく低下する。一方DNMT3A/Bについては大きな変化は認められない。HEFを一日二時間暴露し、これを四日間続け、その時点の細胞とそこから一週間培養を続けた細胞とを比較すると、後者ではSA-β-gal陽性細胞が大幅に増加しており、ゲノムDNAのメチル化レベルとDNMT1の発現レベルが(mRNA、タンパクレベル共に)低下している(Zhang et al., 2008 #268)。BS2細胞の細胞老化に関しても同様なDNMT1の発現低下が報告されている(Zheng et al., 2006 #265)。BS2細胞の継代に伴うゲノムワイドなDNAメチル化レベルの推移については調べられていないが、p21プロモーターのメチル化は一過的に増加し、併せてp21の転写が増加している事が示されている(Zheng et al., 2006 #265)。臍帯血由来幹細胞はSA-β-galやINK4A、p21の発現を伴う細胞老化を示し、このときDNMT1/3Bの発現も低下する。臍帯血由来幹細胞を5-azaで処理するか、DNMT1あるいはDNMT3BをKDするとp16とp21遺伝子周辺のH3K27me3修飾レベルが低下し、それらの発現が増加する。DNMT1/3Bの阻害はそれぞれEZH2、BMI1をターゲットとするmiR-200cおよびmiR-214のプロモーターの低メチル化を引き起こし、その発現を増加させる(So et al., 2011 #269)。DMBA/TPAの塗布によるpapillomaの発生に際しては、DNMT1の発現は一過的に上昇するが、成長が停止した後には減少している(Yamakoshi et al., 2009 #270)。正常な皮膚に対して、DNMT1の発現が上昇している時点のearly papillomaではROSレベルとp16の発現が増加しており、成長が停止したlate papillomaではこれらは更に増加している(Yamakoshi et al., 2009 #270)。TIG-3細胞にH-Rasを強制発現させ早期老化を誘導すると一過的な増加の後DNMT1の発現レベルは大きく低下するが、この場合もROSレベルとp16の発現は増加していく。H-Rasの強制発現によるDNMT1の発現低下はカタラーゼの添加により部分的に抑制される。DNMT1の発現低下はドキソルビシンの添加によっても惹起される。TIG-3細胞においてDNMT1をKDするとp16プロモーター領域のH3K9me2修飾は低下し、p16 mRNAの発現が増加する(Yamakoshi et al., 2009 #270)。

癌の発生過程におけるDNMTの役割は癌種依存的で、リンパ腫や肝癌などはDNMT1活性の低下により発生頻度が増加するが(Gaudet et al., 2003 #271、Yamada et al., 2005 #123)、逆に大腸癌では低下する(Yamada et al., 2005 #123)。大腸癌についてはDNMT1活性の低下は良性腫瘍の発生頻度は増加させるが、そこから悪性に転じる細胞の割合がより大きく減少する。NIH3T3細胞においてはDNMT1の強制発現は腫瘍形成能獲得を誘導する事が示されている(Wu et al., 1993 #273)。多くの癌でDNMT1およびDNMT3A/Bの発現が増加している(Robertson et al., 2001 #274)。

DNMT1はそのメチル化活性非依存的に足場依存性の制御にも関わっている事が報告されている。DNMT1はSNAIL1/HDAC1と複合体を形成し、メチル化活性非依存的にE-カドヘリンの発現を抑制しているが、この抑制が解かれるとβ-cateninがadherent junctionから核内に移行し、EMTが促進される。DNMT1のエキソン3-6を欠くスプライシングバリアントの存在が示唆されており、これを強く発現する細胞ではE-カドヘリンの発現は抑制される。



  • 最終更新:2013-02-13 13:46:33

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