Hippo_Pathway

Hippo pathwayの活性化は器官の大きさの成長や細胞の増殖を負に制御し、幹細胞の維持や組織の再生にも関わっている。Hippo pathwayが活性化されると、MST1/2-Mob1a/bがLats1(Warts)/Lats2-Sav1をリン酸化する。それにより活性化されたLats1/2-Mob1はコアクチベーターであるYAP/TAZをリン酸化し、核外へ移行させる。カスパーゼによる切断はMST1/2を活性化させる。他にMST1/2-Sav1の活性を制御する因子としてRassf、NF2、Kibraが知られている。YAP/TAZのリン酸化は14-3-3の結合を促進させ、その細胞質局在を促す他分解を誘導しもする。

YAP/TAZは密着結合にリクルートされる事でも抑制され、さらにYAPについては接着斑へのリクルートによる抑制も報告されている。培養細胞の密度が増加すると、YAPの細胞質局在が促される。上皮細胞の細胞接着が損なわれるとYAP/TAZの核内移行が起こる。

核内でYAP/TAZが結合する主要な転写因子はTEADファミリーの転写因子であると考えられており、そのターゲットにはCTGF、Cyr61などが含まれる。他にYAP/TAZはSmad2/3、Runxとも相互作用する他、YAPはSmad1、p73、TAZはPPARγ、Pax3、Tbx5とも相互作用する事が報告されている。さらにYAPはβ-cateninと相互作用しWntターゲット遺伝子の発現を促す事も報告されている。

肝臓ではYAPは恒常的に細胞質に存在している。核に局在するように変異を入れたYAPを強制発現させると、肝臓が大きくなり、強制発現期間が長いと癌を発症する。Hippo pathwayを阻害したマウスでも同様である。HepatocyteではMst1/2が、Oval細胞ではMst1/2、Sav1、MerがYAPの機能を抑制しているようである。NF2、Sav1、あるいはMST1/2両方の欠損も肝臓の肥大化及び癌化を引き起こさせる。NF2の欠損によるこの表現型はYAPに依存している。

Warts/Lats2はYAP/TAZを介する以外のメカニズムによっても細胞周期野制御に関わっている。まず、WartsとLats2はCDK1の活性を負に制御できる。

さらにLats2は中心体へのチューブリンをリクルートする事、及び中心体でAurora-Aと会合しその基質となる事が報告されている。Lats2はM期にストレスがあると核内に移行し、Mdm2によるp53の分解誘導を抑制し、細胞周期を停止させる。また紫外線ダメージを受けた時、ATR-Chk1、ATM-Chk2により活性化されたLats2が14-3-3をリン酸化しP-bodyへ移行させ、翻訳を抑制させる。癌化シグナルによりLats2が活性化されると、Lats2がp53結合因子であるASPP1をリン酸化し、核に移行させ、p53のアポトーシス関連遺伝子の転写を促進させる。種差はあるが、Lats2の強制発現によるG2/M期での細胞周期の停止が報告されている。Lats2はDYRK1Aをリン酸化し、DYRK1AによるMuvB複合体のリン酸化を促進させる事で、さらにE2F4やp130を含むDREAM複合体の形成を促進させ、E2Fターゲットの発現を抑制して細胞老化の誘導(SAHFの形成やSA-β-galマーカーの発現)に寄与する(Tschöp et al., 2011 #445)。DREAM複合体はMyb-MuvB複合体を減少させもする。

WartsはLIMK1を介して細胞質分裂の制御に関与している事が報告されている。正常な4倍体細胞ではp53およびpRb依存的に細胞周期が停止させられているが、不活性型のWartsを発現させた細胞では8倍体細胞が出現するようになる。

WartsとLats2はどちらも分裂期にはリン酸化修飾を受けている。両者はキナーゼドメイン以外のアミノ酸配列が大きく異なっており、独立した機能を多く有しているものと考えられる。



その他の参考文献
Litovchick et al, 2011 # 530
Zhao et al, 2011 # 531




  • 最終更新:2013-02-13 13:54:24

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