PMLボディ

PMLボディは直径約0.1~1.0 um程の球形の構造で、ほとんどの細胞に存在し、DNAの複製や転写、エピジェネティック制御などとの関わりが示唆されている。PMLボディに含まれるタンパク質は100種類以上同定されており、その中心的な構成要素の一つがPMLである。PMLはTRIM/RBCCファミリーの一員で、会合して大きな構造体を形成する事ができる。但し、細胞中の大部分のPMLはPMLボディの中には無く遊離した状態で存在している。PMLはSIM(SUMO interaction motif)を有し、また自身もSUMO化のターゲットである。PML以外の多くのPMLボディの構成因子もSUMO化修飾やSIMを有している。PMLボディは、まずPMLが集まり、SUMO化されていき、次いでSIMを有するタンパク質がリクルートされていく事で形成されると考えられている。PMLはATM、ATR、CHK2、CK2、ERKなどによるリン酸化修飾も受け、それらによってもPMLボディの形成や機能が制御されていると考えられる。PMLには異なる複数のスプライシングバリアントが存在する。PML Iは最も量が多く、NLSに加えNESを有する。PML IVについてはその強制発現がヒト繊維芽細胞において細胞老化を引き起こす事が報告されている。PMLボディの構造は細胞の種類や状態に応じて異なり、またストレスによって一時的に大きくなる等の変化を示す場合がある。PMLの転写はIFNα、β、γ、p53によって促進される。他の多くのPMLボディの構成因子の発現もIFNによって促進される。一部のPMLボディはその中に多くのリボヌクレオタンパク質を含んでいる。ALTによってテロメアを伸長する細胞では、ALS-associated PMLボディ(APBs)が存在し、これにはMRN複合体、Rad51、Rad52、RPA、BLM、TRF1、TRF2などが含まれる。

PMLは細胞老化の制御に関わる他、アポトーシスの抑制にも関わっている。PML欠損マウスのMEF、胸腺細胞、リンパ球はアポトーシスの誘導に対して抵抗性を示す。PMLはp53の活性化を促し、Mdm2の機能を抑制する。また、DaxxはPMLボディにリクルートされてアポトーシス抑制遺伝子の発現を抑制させる。PMLは小胞体からのCa2+の放出を促進させる事でもアポトーシスを促進させる。他に、PMLはmTORを抑制したり、血管新生を抑制したりする(Chen et al., 2012 #557)。

PMLを欠くマウスではPMLボディは形成されないが、大きな異常を示さない。但し、PMLを欠く細胞では姉妹染色体交換の頻度が高くなっており、且つ細胞老化が抑制されている。パピローマや、上皮性悪性腫瘍、リンパ腫などの頻度は増加している。PMLボディにはCBP、HDM2、HIPK2、HAUSPなど、p53の翻訳後修飾を担う酵素が多数存在しており、PMLボディはp53の機能制御に関わっている事が考えられる。更に、PMLボディはSAHFの形成やpRb依存的なE2Fターゲットの抑制にも関与している。

癌細胞ではしばしばPMLの発現がタンパクレベルで抑制されており、これはプロテアソームによる分解によっている。KLHL20やE6APなどのE3 ligaseがPMLの分解誘導に関わっている。KLHL20とPMLの相互作用は、Pin1によるPMLのプロリン異性化により促進され、Pin1による修飾はCDK1、2、ERK2により促進される。ストレスに際してp38MAPKにより活性化されるCK2も、リン酸化修飾によりPMLの分解を促進させる(Chen et al., 2012 #557)。

他の参考文献
Lallemand-Breitenbach & de The, 2010 #278


  • 最終更新:2013-02-13 14:03:48

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